美しい日本の詩歌 秋編!
2012年6月30日 土曜日
美しい日本の詩歌(土屋秀宇著)より、”四季を生きる”秋の句・詩を書きとめる。
1、詩
落葉松 北原白秋
一
からまつの林を過ぎて、
からまつをしみじみと見き。
からまつはさびしかりけり。
たびゆくはさびしかりけり。
二
からまつの林を出でて、
からまつの林に入りぬ。
からまつの林に入りて、
また細く道はつづけり。
三
からまつの林の奥も
わが通る道はありけり。
霧雨のかかる道なり。
山風のかよふ道なり。
四
からまつの林の道は、
われのみか、ひともかよひぬ。
ほそぼそと通ふ道なり。
さびさびといそぐ道なり。
五
からまつの林を過ぎて、
ゆゑしらず歩みひそめつ。
からまつはさびしかりけり、
からまつとささやきにけり。
六
からまつの林を出でて、
浅間嶺にけぶり立つ見つ。
浅間嶺にけぶり立つ見つ。
からまつのまたそのうへに。
七
からまつの林の雨は
さびしけどいよよしづけし。
かんこ鳥鳴けるのみなる。
からまつの濡るるのみなる。
八
世の中よ、あはれなりけり。
常なれどうれしかりけり。
山川に山がはの音、
からまつにからまつのかぜ。
2、漢詩
静夜思 李 白
牀前月光を看る 疑うらくは是れ地上の霜かと
頭を挙げては山月を望み 頭を低れては故郷を思う
3、短歌
夕されば野辺の秋風身にしみてうづら鳴くなり深草の里
(藤原俊成 千載集)
ゆく秋の大和の国の薬師寺の塔の上なるひとひらの雲
(佐々木信綱 新月)
4、俳句
名月を取ってくれろとな泣く子かな 小林一茶
山は暮れて野は黄昏の薄かな 与謝蕪村
赤蜻蛉筑波に雲もなかりけり 正岡子規
《一口メモ》
心の琴線に触れる詩、句に出会えて嬉しかった。全ては覚えきれないが、日々の生活の中でふと思い浮かんでくることを願うばかりである。
了
by tinnan1515 | 2012-06-30 09:18 | お気に入り俳句・漢詩 | Comments(0)